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Web 記事 - バルク・エッジ対応

バルク・エッジ対応

カテゴリ : 
研究解説:  » 量子液体
執筆 : 
hatsugai 2009-12-15 7:00

量子ホール効果は2次元電子系にて実験的に測定されるホール伝導度が極めて高い精度で量子化される現象であり、その発見(Klaus von Klitzing, 1985) に対してノーベル物理学賞が与えられました。現在では、この系の量子基底状態はいわゆるトポロジカル絶縁体の典型例かつ最初の例であると考えられています。

トポロジカルとは、遠い近いという概念を無視して、つながっているものはつながってるままにするような変形をすべて許したとき、それでも生き残る概念をさします。例えば、取っ手のついたコーヒーカップと浮き輪は粘土から穴が1つあるという性質はそれらが粘土から出来ていると見なせば、連続変形できることが想像していただけるのではないでしょうか?量子ホール効果はこのようなトポロジカルな量に支配されている現象であり、それ故、異常なまでの高精度でその量子化が実現するのだと考えられているのです。その後、今日までの多くの研究によって、今日では、このようなトポロジカルな起源をもつ物質相は他にも多種あり、量子的な物質相としては、ある意味で典型的でさえある重要な相であることが認識されるようになり、量子ホール相と同様のトポロジカルな起源を持つ絶縁体はトポロジカル秩序の名の下に多様な物質相を包括する一群の物質相であることがわかってきました。近年話題の量子スピンホール相もその一つと考えられます。これらのトポロジカル秩序相はバルクには一切特徴をもたず、如何なる対称性の破れを伴わなず特徴の無い、いわば「のっぺらぼう」の相であり、唯一バルクのホール伝導度が特徴的物理量であり、これはチャーン数とよばれる一般のベリー接続から定義されるトポロジカル不変量にて記述されることとなります。一方で物理系が境界があるとき、その系の境界には典型的な局在状態が系の細部の委細にかかわらず、特定の形であらわれます。この局在状態はエッジ状態とよばれますが、これがまたある種のトポロジカル不変量を定義し、これが境界のある系のホール伝導度をあたえるのです。この論文ではその2つの位相不変量のあいだの関係を厳密に与えました。もちろん熱力学的物理量を考える際、系に境界があるかないか等は無限体積極限で無視できることとなりますが、トポロジカル絶縁体においては、系が境界を持つときにあらわれる局在状態としてのエッジ状態こそが系の特徴と考えられるのです。これらのバルクとエッジの相互関係を「バルク・エッジ対応」とよびます。このバルクエッジ対応の立場からは、非自明なバルクの存在は非自明なエッジ状態の存在を示唆し、逆にまた特徴的局在状態としてのエッジ状態はバルクが非自明なトポロジカルな相であることを意味するのです。私が論文でトポロジカル絶縁体の典型例である量子ホール系に関して、私が「バルクエッジ対応」を初めて発見し、厳密にその成立を示したあと[1][2]、多くの研究で他の系での成立が確認され、現在では、この「バルクエッジ対応」の概念はより広くトポロジカル絶縁体において成立するきわめて普遍的なものであると今日では広く信じられつつあります。最近ではこれを Hatsugai-conditionと呼んでくれる人もいます。

[1]"Chern Number and Edge States in the Integer Quantum Hall effect", Y. Hatsugai, Phys. Rev. Lett. 71, 3697 (1993) [Phys. Rev. Lett.]

[2]"Edge states in the Integer quantum Hall effect and the Riemann surgace of the Bloch function", Y. Hatsugai, Phys. Rev. B48 11851 (1993) [Phys. Rev. B]

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